要点
日本語サイトは専門の翻訳会社に任せています。それでも何か問題が起きるのでしょうか。
本稿の元になった作業で効いた指摘は、ほとんどが「訳の巧拙」ではありませんでした。帰属と構造の不具合です。英語が「当社」と書いている箇所で、日本語ページが別の会社の名前を出している。パートナー向けFAQの10項目のうち1項目だけ、日英で中身がまったく違う。lang="ja" で配信されているページのタイトルとディスクリプションが英語のまま。翻訳会社は、渡された文字列を正しく訳します。ここに挙げたものは、いずれも文字列の問題ではありません。
日本語が読めなくても確認できますか。
できます。言葉づかいではなく構造を比べるからです。会社名は日英で同じ文字列ですから検索できます。FAQの項目数は数えられます。ページタイトルはソースを見れば読めます。本稿の確認手順は、日本語をまったく読まない人が実行して「ある/ない」で答えが出るものだけを選んであります。ただし、これらは日本語の質が良いかどうかは何も教えてくれません。それは日本語を読む人が読むしかなく、別の仕事です。

要約

実サイトを分解して調べ、再確認でも残った指摘は6パターンありました。いちばん強いものは、訳の問題ですらありません。英語が「当社」と書いている文で、日本語ページにはあなたの製品を作っていない会社の名前が出ている、というものです。続いて、3行上に正しい専門用語があるのに下の行では別の語になっているもの。10項目のFAQのうち10番目だけが日本語では別の質問になっていて、契約上の義務が片方の言語にしか書かれていないもの。日本語で配信しているのにタイトルが英語のままのページ(同じサイトにきちんと日本語化されたページもあるので、方針ではなく取りこぼしだと分かります)。そして、1つのサイトに2種類の日本語が同居していて、サイト全体の平均では見えなくなってしまうもの。外部レビューを発注するか迷っている方には、最後の節を読んでいただきたいと思います。取り下げた5件とその理由、そして指摘がすべて同じ方向を向いたレポートは監査ではなく営業資料だ、という話を書いています。

この記事の要点

日本語ページが、よその会社の名前を出している

これが私たちの見つけたなかで最も強い指摘で、確認するのに日本語がいちばん要らないものでもあります。

ある製造業のサイトで、製品・サービスページ1,135枚を全数走査したところ、英語の「we」「our」が無関係な他社名に置き換わっている文が、7ページにわたって9文、出現回数にして11回ありました。指摘は3つの事業領域にまたがっていました。英語原文には1件もありません。他の4言語版にもありません。日本語版にだけ存在していました。

いちばん重かったのは部品販売のページです。ある文は「〈他社〉は、お客様の機器のメーカーとして…」と書き、その隣の文は「〈サイト所有者〉純正部品」と書いていました。隣り合う2文、2つの異なる所有者。しかもそのページの商業的な目的は、保守エンジニアにどちらか一方から買ってもらうことです。

ほかにもいくつかは規制準拠の記述の中にありました。FDA、USP、ISO、EU規則への言及です。つまり、準拠を保証する主体として名前が出ているのが、その製品と何の関係もない会社だ、ということになります。

「翻訳ミス」として片づけて先へ進みたくなるところなので、なぜ重いのかをはっきりさせておきます。これは翻訳ミスではなく、主語の誤りです。文法は正しく流暢なのに、読者が誰と取引するのかについて間違ったことを書いています。日本語が自然かどうかを見るレビューでは、実際に自然なので、そのまま通ってしまいます。

あなたのサイトで5分で確認できます:日本語の製品ページを開き、ブラウザの検索機能で自社名以外の企業名を検索してください。会社名は日英で同じ表記ですから、日本語は要りません。ヒットしたら、同じURLの英語版を開いて該当する文を読みます。英語が「we」「our」なら、1件見つかったことになります。

正しい用語は、すでに3行上にあります

2つ目のパターンは繰り返し現れました。正しい専門用語の数行下に、誤った用語がある。同じページの、同じセクションの中でです。

ある事例では、2つの語は音がほぼ同じで漢字が違い、その違いで意味が変わっていました。別の事例では、同じ2行のなかに英語が併記されていて、その隣にあるカタカナ表記どうしが食い違っていました。3つ目では、日本語から出て英語に渡り、また日本語に戻ってきた製造業の用語が、日本語には存在しない造語になって帰ってきていました。

件数は少なくても、この種の指摘に価値があるのは、ある言い訳が使えなくなるからです。誤った用語しかないページなら、それが社内表記だと言い張れます。しかし3行上に正しい用語があるなら、正解はもう組織の中にあります。壊れていたのは、それを最後まで揃えて使うはずだった工程のほうです。

確認:あなたの製品カテゴリーが実際に依拠している用語を5〜6個選び、主要な日本語ページでそれぞれを検索してください。見るのは「その訳語が正しいか」ではありません。1枚のページに2通りの表記が同居していないかです。

10項目のFAQのうち1項目が、まったく別の質問だった

あるマーケットプレイスのサイトで、パートナー向けFAQが日英ともアコーディオン形式の10項目で作られていました。1番から9番までは対応しています。10番目だけが対応していませんでした。

英語の10番目は義務の説明でした。パートナーがどの取引を申告する必要があるか、プラットフォーム上で成約しなかったものも含むこと、申告した取引は次回の請求書に反映されること。日本語の10番目は「お困りですか? カスタマーサポートまでお問い合わせください」という一般的な定型文でした。

つまり、手数料・請求・トラブルに直結する契約上の義務の告知が、日本語版のページのどこにも存在していなかったということです。これは「どれくらい上手に訳されているか」の話ではありません。契約の一部が片方の言語にあって、もう片方にない、という話です。

構造として役に立つのはここです。項目数は一致していました。10対10です。件数を比べる検査ならこのページを通します。そして2言語を見出しごとに突き合わせる検査なら、1分かからずに捕まえます。

確認:利用規約・パートナー向け・請求関連のFAQを2言語で並べ、上から見出しを突き合わせてください。件数が同じでも何の証明にもなりません。探すのは2つの見出しが別の話をしている1項目です。

lang="ja" のページに、Googleが表示するタイトルが英語で出る

同じサイトの3枚のページを並べると、状況がよく分かりました。1枚は日本語ページとして配信されているのに、<title> もメタディスクリプションも英語のまま。2枚目はタイトルだけが英語で、ディスクリプションは日本語。3枚目は両方ともきちんと日本語でした。

3枚目があるので、これは好みの問題では済まず、指摘になります。全ページが英語なら、グローバルで統一するという意図的な判断だと説明できます。きちんとできているページがある以上、残りは取りこぼしです。そしてこういう場合の常として、取りこぼしは有料の認証サービスを売っているページで起きていました。

この損失ははっきりしているのに、軽く見られがちです。検索結果にはタイトルとディスクリプションが表示されます。日本の買い手は日本語で検索し、日本語ページのはずなのに英語のスニペットを見て、開く前に判断してしまいます。翻訳が完璧なページでも、読んでもらえるかどうかが決まる入口で負けることがあるのです。

確認:日本語ページを開いてページのソースを表示し、<title> と <meta name="description"> を見てください。まとめて見るなら、日本語パスに絞った site: 検索を実行し、検索結果のスニペットに英語が混ざっていないか一覧で眺めるのが速いです。

1つのサイトに、2種類の日本語が同居している

あるサイトで10枚を精読したところ、ページによって質がまるで違いました。最初から日本語で書かれたと読めるページには、直訳調の文が1つもありませんでした。直訳と読めるページでは、およそ100パーセントが直訳調です。ただし母数は4文なので、測定というより目安の数字です。他社名が混入していたページ群は60〜70パーセントほどでした。

この幅から実務上言えるのは、サイト全体の平均値はほとんど役に立たないということです。平均はどこか真ん中の数字になり、実在するどのページにも当てはまらないまま、全員を安心させてしまいます。背景にあるのはよくあるパターンです。良い日本語を書ける人を雇っていて、その人たちは自分の担当ページを書く。一方で、製品データベースや外注のパイプラインから流れてくるページ群があり、そちらはその人たちの手を通らない。

私たちが品質をサイト単位ではなくページ単位で報告しているのも、サイト全体の1つのパーセンテージから始まる提案書は注意して読んだほうがいいと申し上げるのも、これが理由です。

確認:自社の日本チームが書いたと分かっているページと、製品データベースから流し込まれているページを1枚ずつ開いて、同じ人に両方読んでもらってください。どちらかを採点するのではありません。あなたのサイトに声が1つあるのか2つあるのかを知るためです。

取り下げたもの ── そちらのほうが、残したものより重要です

外部レビューを発注する価値があるかどうかをこの記事で判断しようとしている方は、この節を読んでください。

同じ一連の作業のなかで、2度目に見たときに耐えなかった指摘を5件、取り下げています。

この一覧から2つのことが出てきます。1つ目は、数えることについての警告です。この監査の1つでは、日本語ページに残っている英語文字列の機械カウントが、別の言語版のカウントとほぼ一致しました。これは、その文字列が日本語の不具合ではなくプラットフォームの挙動であることの、かなり確かな印です。もっと一般的に言えば、「英語が残り N 件」という合計には、構造上、文が下手に訳されている事例が1件も含まれません。この2つは別の測定であり、あなたが買おうとしているのはそのうち片方だけです。

見つけたものの先頭には置かなかった細かい不具合も、同じです。語の途中に余分なスペースが入っている。画面に表示されない画像の alt が英語のまま。1文字だけ欠けている。スタイルシートのフォント名のつづりが違う。どれも実在しますし、どれもお客様の側で午後のうちに直せます。何かを発注する理由にはなりません。それを理由のように並べた時点で、指摘一覧は営業資料になってしまいます。

2つ目は、指摘の向きです。レポートの指摘が全部同じ方向を向いている ── 何もかも壊れていて、無事なところが1つもない ── なら、それは実在するサイトの姿ではありません。サイトにはむらがあるものです。何も捨てずに返ってきたレビューは、2度目の確認を経ていないということです。

今週、自社サイトでこれをやるには

ここまでの確認手順をまとめると、中規模のサイトで1時間ほど、日本語は要りません。

  1. 日本語ページを自社名以外の企業名で検索する。ヒットしたら英語の該当文と突き合わせる。
  2. 中核の専門用語を5〜6個検索し、1枚のページに2通りの表記が無いか見る。
  3. 利用規約とパートナー向けFAQを2言語で並べ、見出しを上から突き合わせる。
  4. 商業的に重要な日本語ページ3枚のソースを表示し、<title> とメタディスクリプションを読む。
  5. 手書きのページとデータベース由来のページを並べて読み、同じ会社の声に聞こえるか判断する。

限界もはっきりさせておきます。これらの確認ではあなたのサイトの日本語が良いかどうかは何も分かりません。分かるのは3つです。日本語サイトがあなたの会社について本当のことを書いているか。英語サイトと同じ約束が書かれているか。日本の検索エンジンに日本語ページとして認識されているか。そしてこの3つこそ、誰にも気づかれないまま静かにお金を失っていく種類の不具合です。気づけるはずの人が、全員もう片方の言語で読んでいるからです。

本稿の指摘は、稼働中の企業サイトに対するローカライズQA業務から得たものです。会社名・製品名・URLは意図的に伏せています。数値は作業を行った日の実測であり、サイトは変わります。件数は規模の目安として挙げたものであって、現在のどなたかのウェブサイトの記述ではありません。

よくあるご質問

これらの指摘はどこから来たもので、会社名を教えてもらえますか。

稼働中の企業ウェブサイトに対するローカライズQA業務から得たもので、その多くは日本語のページを持つ製造業やマーケットプレイスです。会社名は出しません。あなたの会社のことも同じように出しません。本稿の事例はすべて、会社名・製品名・URLを削除してあり、いくつかは記述からページが特定できないように一段ぼかして書いています。変えていないのは中身のほうです。件数、言語版どうしの関係、そしてそれぞれの指摘を残した理由と捨てた理由は、そのままです。

翻訳会社はISO認証を取得していて、レビューもネイティブが行っています。それでも起きますか。

かなりの部分は防げますが、本稿の冒頭の指摘は防げません。翻訳者は文字列を渡され、それを訳すよう頼まれます。原文が「we」で、翻訳メモリにそのセグメントの訳として、以前の別の文脈で登録された会社名が入っていれば、出力は流暢なまま間違います。日本語だけを読むネイティブのレビューアーには、照らし合わせる原文がありません。訳されたのではなく差し替えられたFAQ項目も同じで、レビューアーが受け取るファイルにはそもそも入っていません。こうした不具合は原文と公開ページのあいだで起きていて、そこはちょうど翻訳工程が見ていない場所なのです。

日本語サイトに英語が何件残っているかのレポートを持っています。これは品質の指標になりますか。

完了度の指標です。計画を立てるには役に立ちますが、品質の指標ではありません。この2つはしょっちゅう混同されます。未翻訳文字列のカウントで分かるのは、まだ手をつけていない量です。訳した部分が正しいかどうかは何も分かりません。下手に訳された文も、訳されてはいるのでカウントには出てこないからです。本稿の元になった監査の1つでは、日本語ページの英語文字列カウントが別の言語版とかなり近く、その文字列は日本語の訳し漏れではなくプラットフォームの挙動だと分かりました。提案書がこの数字から始まっているなら、訳文のうち実際に何割を読んだのかを聞いてみてください。

数字に意味が出るまで、サイトのどれくらいを読む必要がありますか。

サイトの構成に見合うだけ、です。たいていは全体の何割かではなく、区分ごとにその何割かを読むことになります。手書きの企業ページとデータベース由来の製品ページがあるサイトには、母集団が2つあります。それを考えずに取った標本は、どちらの実態も表しません。私たちは、区分ごとに比例して精読し終えるまで「修正総量」──実際に何文字が変わるのか──を出しません。1つの区分から外挿した合計は、小数点まで付いていても意味のない数字だからです。外挿値を出すときは、有効数字1桁に丸めるか、幅で示します。あえてそうしています。