- 日本のバイヤーは、なぜ価格より先に会社情報ページを見るのですか?
- 日本の法人購買では、評価している担当者が、話したことのない法務・経理・調達に対してあなたを説明する必要があるからです。そのため最初に確認されるのは「どういう法人か」=登記上の社名・代表者・所在地・設立年・資本金です。それが1ページにまとまっていると社内稟議が作れます。ミッションステートメントでは作れません。
- 日本法人が無い場合、そのページには何を書けばいいですか?
- 同じ項目を、自社の実態のまま書きます。法人名(英語表記+カタカナ表記)、代表者、海外の本社所在地、設立年、資本金、従業員数、事業内容、そして海外ベンダーとの契約・請求がどうなるかの短い説明です。海外の会社であること自体は問題になりません。特定できないことが問題になります。
この記事の要約
日本市場に入る海外SaaSは、説得力があると思っているページ——製品、価格、機能、創業ストーリー入りのAbout——を先に翻訳し、日本の法人バイヤーが最初に開くページを飛ばしてしまう。それが会社概要だ。会社概要は読み物ではなく表である。社名、代表者、所在地、設立年、資本金、従業員数、事業内容。目的は感心させることではなく、法務や調達に推薦を出す前に「実在する特定可能な会社だ」と確認させることにある。このページが無い商談は、断られるのではなく静かになる。同じ数個の質問がメールで1往復ずつ返ってきて、その間に、追いかけなくていい他の案件に順番を抜かれていく。
この記事の要点
- 日本のバイヤーは、評価する前に確認する。最初の質問は「製品が何をするか」ではなく「どういう法人か」。
- 会社概要は物語ではなく表である。社名・代表者・所在地・設立年・資本金・従業員数・事業内容。決まった位置に事実が並び、10秒で読み取れる。
- Aboutページはこの役割を果たさない。ミッションとチーム写真は、調達部門が聞いていない質問への答えになっている。
- 書いていない情報は、メールになり、遅延になる。公開しなかった事実の数だけ、推してくれている担当者が代わりに往復する。
- 正直な海外住所は、それらしい東京住所に勝る。実在する海外住所は審査を通る。実体と結びつかない住所は、他の記載まで疑わせる。
毎回、同じ3つの質問が返ってくる
日本参入の1年目に、ほぼ必ず現れるパターンがある。商談は順調だ。日本のバイヤーは製品を気に入り、デモの手応えもよく、社内に持ち帰りたいと言っている。そこにメールが届く。登記上の社名、代表者名、本社所在地を教えてほしい。送る。1週間後、また届く。設立年、資本金、従業員数はおよそ何名か。それも送る。次は請求の扱い。
誰もこれを「摩擦」だとは思っていない。バイヤーは親切にしているだけで、社内であなたを推すために必要な材料を集めている。ただ、そのメール1通ごとに1週間が過ぎる。そしてその1週間は、あなたの製品が最適かどうかの検討には1秒も使われていない。ページに書いてあれば済んだ事実を、集める作業に使われている。
会社概要ページとは何か
日本の会社のウェブサイトには、ほぼ例外なく「会社概要」というページがある。日本のウェブで最も定型的なページの一つで、形もだいたい同じだ。左に項目名、右に事実。2列の表である。
典型的な行はこうなる。会社名、設立、代表者、所在地、資本金、従業員数、事業内容。規模の大きい会社なら主要取引先や許認可が加わる。装飾は無く、物語も写真も無い。それでいい。読み手は納得しに来ているのではなく、確認しに来ているからだ。
この慣習は、無いと気づかれる程度には根づいている。あなたのサイトでこのページを見つけられなかった日本語話者は、「この会社は会社紹介の作法が違うのだな」とは考えない。「どういう会社なのか分からなかった」と考える。
Aboutページでは代わりにならない
それならAboutページがある、と言いたくなる。たいていの場合、代わりになっていない。英語圏のAboutページは、ミッションステートメントから始まり、創業のエピソードに移り、経営陣の顔写真で締める。読み手に「この会社を信じてもいい」と感じさせるために書かれている。
そこに日本の法人バイヤーを座らせてみる。知りたいのは、契約書に署名するのはどの法人か、その法人はどこに登記されているか、いつからあるのか。そのページは、そのどれにも答えていない。ページが悪いのではない。別の質問——調達の誰も聞いていない質問——に答えるために作られただけだ。
違いを一行で言うと:Aboutは信じてもらうために書かれ、会社概要は確認されるために書かれている。
バイヤーが社内で求められているもの
推してくれている担当者が入っていく部屋を想像すると分かりやすい。日本企業が新しいベンダーを入れる前、その申請はたいてい法務・経理・調達を通る。あなたと一度も話さず、書かれたものだけを読む人たちだ。取引先登録票や社内の稟議書が求める項目は、だいたい決まっている。
- 契約主体となる法人の正式名称
- 代表者名
- 登記上の本社所在地
- 設立年月日
- 資本金
- おおよその従業員数
- 事業内容
- 請求の扱い(インボイス制度の適格請求書発行事業者登録番号の有無を含む)
これを埋めるのは担当者だ。サイトに載っていれば午後いっぱいで終わる。載っていなければ、時差のある海外ベンダーへのメールの往復から始まり、その案件は「誰も追いかけなくていい仕事」の間に置かれたまま順番を待つことになる。
東京の住所を作らない
ここで出てくる近道が、実態より現地らしく見せることだ。港区のバーチャルオフィス住所、日本語っぽい社名、海外に転送される電話番号。気持ちは分かるが、たいてい逆効果になる。
海外ベンダーであること自体は、日本の調達では解決できる問題だ。海外の取引先から買うこと自体は日常的にある。特定できないベンダーであることは、別の種類の問題になる。住所が何とも突き合わせられないと、形式的だったはずの確認が「この会社の信用そのものへの疑問」に変わり、その疑問は他の記載にも波及する。
ここでは、近さより正直さのほうが通る。実在する法人、実在する住所、そして日本国外の会社と契約するとどうなるのかを、そのまま書く。それは疑問をかわす書き方ではなく、答える書き方だ。
今週作れるページ
これは本当に小さな作業で、だからこそ後回しになる。戦略の仕事に見えないからだ。日本語で、固定のURLで、表として作り、日本語サイトのフッターからリンクする。
法人名は英語表記とカタカナ表記の両方を書く。カタカナは見た目以上に効く。英語の綴りを打つ気のない担当者が、社内フォームに入力するのはそちらだからだ。
代表者名を入れる。日本の社内文書では、名前のある個人が書かれていることに重みがある。「経営チーム」では代わりにならない。
本社所在地は事実のまま書く。海外ならそのまま海外の住所を、日本に支店や子会社があるならそれも併記する。
設立年・資本金・従業員数を書く。数字が小さくても構わない。設立5年・少人数の会社は「分かっている相手」だが、書かれていない会社は「分からない相手」になる。
契約と請求について1〜2行を足す。どの法人が契約するのか、請求通貨は何か、適格請求書発行事業者登録番号があるなら番号を。無いなら、日本の顧客への請求をどう扱っているかを空欄にせず書く。
見落としているサイン
兆候は地味で、すでに受信箱の中にある。直近の日本案件をさかのぼって、登記上の住所・代表者名・設立年を聞かれた回数を数えてみてほしい。同じ質問が毎回メールで届いているなら、それは通常のデューデリジェンスではない。公開していないページが、バイヤーごとに1件ずつ手作業で組み立て直されている、ということだ。
このページが無いことを、誰も指摘してはくれない。バイヤーは質問し、待ち、やがてもっと速く進む別の話に移るだけだ。Japan Readiness Checkは、まさにこの種の抜け——日本のバイヤーが当然あると思って探し、静かに見つけられないページ——を洗い出す。
よくある質問
会社概要ページと、英語サイトのAboutページは何が違うのですか?
会社概要は、社名・代表者・所在地・設立年・資本金・従業員数・事業内容を2列の表で並べた「事実の一覧」です。一方、英語圏のAboutページはミッションや創業ストーリー、チーム写真といった読み物になっていることがほとんどです。役割が違います。Aboutは納得させるためのページ、会社概要は確認させるためのページです。
日本法人が無くても、会社概要ページは作れますか?
作れます。書くのは契約主体である法人の事実です。日本に拠点が無く米国法人が契約主体なら、その法人名(英語表記とカタカナ表記)、実際の本社所在地、設立年、代表者をそのまま書きます。問題になるのは「海外の会社であること」ではなく「どの法人か特定できないこと」です。海外ベンダーは社内審査を通せますが、特定できないベンダーは通せません。
日本らしく見せるために、東京のバーチャルオフィス住所を載せたほうがいいですか?
おすすめしません。取引先登録や与信の確認では登記上の所在地を尋ねられることが多く、実体と結びつかない共有オフィスの住所は、正直な海外住所より不利に働きます。形式的な確認だったはずの一手間が、「他の記載も本当なのか」という疑いに変わるからです。日本に支店や子会社が実在するなら書く、無いなら実際の所在地と契約の仕組みを書く。それがいちばん通りやすい形です。
日本の調達部門は、サイトに載っていない何を聞いてくるのですか?
よく聞かれるのは、契約主体となる法人の正式名称、代表者名、登記上の本社所在地、設立年月日、資本金、おおよその従業員数、事業内容、そして請求の扱い(インボイス制度の適格請求書発行事業者登録番号の有無を含む)です。海外SaaSのサイトはこのどれにも答えていないことが多く、結果として同じ質問がメールで、1往復ずつ届くことになります。
製品が明らかに優れていれば、そこまで影響しないのでは?
商談の可否そのものを決めることは多くありません。ただ、速度は確実に変わります。社内で推してくれている担当者は、法務・経理・調達に渡す資料を自分で埋める必要があります。基本的な会社情報が公開されていなければ、それをメールで集めるところから始まり、1往復ごとに1週間が過ぎます。このページは商談を勝たせるものではなく、止まる理由を1つ減らすものです。